第1部 総論  

第1章 総合計画の策定に当たって    
第1節 計画策定の趣旨  
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本市では、これまで平成17年度(西暦2005年度)を目標年度として平成12年12月に策定した「第四次総合計画」を市政運営の基本指針として、これに基づく各施策の推進に努めてきました。
この計画は、「明るく元気な“森林文化21”創造計画」と題し、21世紀の幕開けの2001年度を初年度として、第三次総合計画の基本理念である「ものよりも心の豊かさ」を大切に守りながら、本市を取り巻く社会経済環境の変化にも即応した“明るく元気な21世紀の沼田市”の創出を図るものでした。
この間、国の三位一体改革など、地方自治体を取り巻く環境に大きな変化がありましたが、産業や生活の基盤を逐次整備するなど一定の成果をあげてきました。
本市のまちづくりの基本となる「沼田市民憲章」、「森林文化都市宣言」の理念を引き継ぐとともに、白沢村及び利根村との合併(平成17年2月13日)を契機に、地方分権時代に対応できる自治体への転換を図り、大自然と人々が共生する「うるおい」、「ゆとり」、「やすらぎ」の交流拠点として、いきいきと輝く個性あるまち、新しい沼田市のまちづくりを進めていく必要があります。
一方、現在の社会経済情勢は、深刻化する環境問題、加速する高度情報化と国際化、三位一体等の国の行政改革の推進、少子高齢化から人口減少社会の到来、団塊世代の定年退職による地域コミュニティの構成員の変化、市民活動の活発化、多様な行政サービス需要の増加など、「第四次総合計画」策定時の予想をはるかに上回るスピードで変貌しており、厳しい財政状況や市民ニーズの変化に柔軟に対応できる体制づくりや地域に根ざした一層のサービスの充実が求められています。
「第五次総合計画」は、このような背景を踏まえ、本市が地域の有する資源を最大限に発揮できる新しいまちづくりの方向と施策の展開を明確に示すものです。

第2節 計画の期間  
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総合計画は、新しい都市像を実現するための総合的なまちづくりの方針や施策の方向性を体系的に示すものとして、長期的な視野に立った内容が求められていることから、第五次総合計画の基本構想及び基本計画の計画期間は、平成19年度(2007年度)を初年度とし、平成28年度(2016年度)を最終年度とする10か年計画とします。
第3節 計画の構成  
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本計画は、「基本構想」、「基本計画」、「実施計画」の3層で構成します。
1 基本構想
本市の将来に希望が抱ける都市像を示すとともに、それを達成していくための基本的な考え方を明らかにするものです。
2 基本計画
基本構想の具現化に向けた施策の展開を図るため、計画期間中の主要重点施策の考え方と方向性をより具体的に明らかにするものです。
ただし、日々変遷する時代に対応するため、必要に応じて、変更、修正を行うものとします。
3 実施計画
基本計画の実現を図るため、財政状況を踏まえながら、計画期間中の平成19年度から平成23年度までの前期5か年に推進する主要な事務事業を掲げ、ローリング方式により毎年度見直すものとします。
平成24年度から平成28年度までの後期5か年については、その後の財政状況や前期計画の実績等を踏まえて策定するものとします。

第2章 計画策定の背景  
第1節 沼田市の概況
1 位置・地勢・歴史  
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沼田市は、首都東京から約125キロメートルの群馬県北部に位置し、錫ヶ岳、皇海・袈裟丸山などで栃木県と接し、東部は日光連山・赤城山の山岳地帯です。利根川・片品川・薄根川など大小15の河川は、ダムによる発電や防災・首都圏の水がめとして重要な役割を持ち、関東平野を潤し太平洋に注ぎます。標高は、250メートル台から2,000メートル級の山岳まで較差があり、山岳・森林・高原・湖沼・河川・渓谷など、スケールの大きい変化に富んだ自然環境は、本市の大きな特徴です。
こうした恵まれた地勢と豊富な温泉群・スキー場・ゴルフ場・史跡・果樹園や関越自動車道の沼田IC(インターチェンジ)による交通アクセスの良さなどを背景に、日本有数の観光地となっています。また、首都圏の食糧供給基地としても大きな地位を占めています。
本市の総面積は443.37平方キロメートルと広大で、群馬県全体の6.97パーセントを占め、全体の約8割が森林となっています。気候は比較的降水量の少ない、夏冬・昼夜の寒暖の差の大きい内陸性気候に属し、りんご・ぶどう・さくらんぼなどの果樹やレタス・大根・はくさいなどの野菜の栽培地、避暑地に適しています。
冬には豊富な降雪量から首都圏に近いスキー場として有名です。
歴史的に見ると、天文元年(1532年)に沼田氏が居城して以来、明治に至る300有余年の間、真田、本多、黒田、土岐氏の城下町として、利根地域の商業の中心地として繁栄し、大正13年(1924年)には、当時の国鉄上越線が開通し農林産物の集散地として一層の発展を見ました。
戦後は、森林資源を背景に木材関係の工場が増加し、次第に産業の基盤整備が進み、昭和29年(1954年)4月、沼田町を中心に利南村、池田村、薄根村、川田村の1町4か村が合併して沼田市として市制が施行され、平成17年(2005年)2月、白沢村及び利根村との合併により、新「沼田市」が誕生しました。

2 人口・世帯の状況  
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本市の平成17年10月現在の人口は55,503人で、平成12年度時点の56,897人から5年間で2.5%減少しています。
今後もこの減少傾向は続き、平成28年には、50,560人になると予想されます。
平成28年の年齢別人口は、年少人口が5,893人、高齢者人口が15,349人と推計され、高齢化率が30.4パーセントとなり、約3人に1人が65歳以上の高齢者という超高齢社会が到来すると予想されます。
世帯数では、生活意識の変化などを背景に世帯分離が進み、増加傾向にありますが、人口減少に伴って、平成21年ごろをピークに減少に転じると予想されます。
   

3 産業の状況  
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本市の産業別就業者は、平成12年の国勢調査によると、第1次産業が12.5パーセント、第2次産業が30.1パーセント、第3次産業が57.4パーセントであり、群馬県全体と比較して第1次産業従事者の割合が高いのが特徴です。総農家数は減少傾向にありますが、県全体の3.8パーセントを占め、一人当たりの農業粗生産額は210万5,000円で、県平均148万2,000円を大きく上回っています。主に野菜、果実、他に米、こんにゃくいも、乳用牛、豚などが生産されています。また、林家の73.2パーセントは農家林家であり、主要林産物はしいたけ等のきのこ類です。
商業は、旧沼田市中心の商圏と国道120号沿線の新しい出店により、年間商品販売額は908億4,545万円となっていますが、商店数・従業者数・商品販売額ともに減少傾向にあります。
旧沼田市に大規模店舗がありますが、販売額の県シェアは、1パーセント台と低めです。
工業は、木材、食料品、電気機器等の小規模経営の製造業が多く、製造品出荷額等は990億727万円(平成16年)で、事業所数・従業者数とともに減少傾向にあり、一人当たりの製造品出荷額2,906万円は、県平均3,565万円より低い状況です。木材が394億4,089万円(県シェアの約50パーセント)、次いでプラスチック、電気機器等を生産し、平成2年に沼田北部工業団地(6.7ヘクタール)が立地し、横塚生品地区、利根地区に工業用地があります。
観光業は、豊かな地域資源に恵まれ、迦葉山、玉原高原、吹割の滝、白沢高原温泉、老神温泉など全国でも有数の観光地を有し、また、スキー場やゴルフ場が整備され、平成16年度では、観光入込客数が約300万人となっており微増傾向にありますが、消費総額においては約60億円で減少傾向にあります。

4 交通の状況  
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本市は、JR上越線と国道17号によって東京と直結し、上越新幹線(昭和57年)や関越自動車道(昭和60年)の開通によって利便性が増しています。
新幹線では東京から隣接するみなかみ町の上毛高原駅まで約80分、高崎・上越線の特急では上野駅から沼田駅まで約2時間、関越自動車道では練馬ICから沼田ICまで約90分、他に月夜野ICと昭和ICが至近距離にあり、首都圏はもとより全国からのアクセスを可能にしています。
また、沼田ICにつながる国道120号は「日本ロマンチック街道」として位置付けられ、沿線は雄大な眺望を有し、観光農園や道の駅・白沢などの観光施設があります。市内には、一般国道2路線、主要地方道4路線、一般県道12路線があり、JR上越線・沼田駅などの拠点を中心としたバス路線によって地域交通網が形成されています。

     
第2節 時代の潮流    
1 人口の減少  
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日本の人口は、平成17年が1億2,770万8,000人で、平成18年をピークに減少に転じ、平成27年には1億2,626万6,000人になり、特に、年少人口(0〜14歳)と生産年齢人口(15〜64歳)が大幅に減少すると推測(国立社会保障・人口問題研究所)されていましたが、平成16年をピークに人口は減少に転じ、人口減少社会になりました。
生産年齢人口が減少することから、女性や高齢者の就業機会の拡大、労働生産性の向上を図るとともに、高齢者をはじめとして誰もが生き生きと暮らせる環境づくりが求められています。また、団塊世代の定年退職による地域コミュニティの構成員の変化は、新しいまちづくりへの重要な要素として期待されています。
2 少子化と高齢化の進行
日本の年間出生数は、昭和48年の209万人をピークに減少しており、合計特殊出生率でみても同年の2.14から平成17年には1.25まで下降し、長期的に人口を維持できるとされる数値の2.08を大きく下回っています。
育児負担や子育てに要する経済的負担の軽減、男女共同参画社会の実現等、子どもを生み育てやすい環境づくりに社会全体で早急に取り組む必要があります。
また、世界に類例の無い速さで高齢化が進行し、65歳以上人口は、平成12年の17.4パーセントから平成27年には26.0パーセントになると推計されます。
今後は、医療・介護など高齢者に係る費用の次世代の負担を軽減するために、高齢者の生活を地域社会が支え、高齢者も子育て支援など様々な形で地域社会に貢献するなど、地域で共に支え合う仕組みをつくる必要があります。
3 高度情報化の進展
情報通信技術の発達により、個人の情報入手やコミュニケーションが飛躍的に拡大し、地球規模でのより自由闊達な活動が可能となっています。
身近な地域社会においても各種行政サービスの電子申請化やオンラインショッピングなど、生活の中で様々なサービス利用が現実のものとなっており、誰もがいつでもどこでも情報通信技術を利用できるように、安全・安心な利用環境の整備に取り組む必要があります。
4 中心市街地の衰退と空洞化
中心市街地には、古くから商業を中心として様々な都市機能が集積し、人々の生活や娯楽や交流の場となり、また、長い歴史の中で地域独自の文化や伝統を育むなど、その街の活力や個性を代表する「顔」となっていました。
しかし、多くの都市で、モータリゼーションの進展への対応の遅れ、商業を取り巻く環境の変化、中心部の人口の減少と高齢化などを背景に、中心市街地の衰退・空洞化などの問題が深刻化しています。
このことから、郊外への大規模集客施設の立地を規制し、コンパクトなまちづくりにより、人の流れを中心市街地に集めることで街のにぎわいを取り戻すことを目的に、平成18年にまちづくり三法が改正されたところです。
中心市街地は、これからも地域経済の発展や豊かな生活の実現に大切な役割を果たす場所であり、これからの時代のニーズに対応した地域コミュニティの中心として、人が住み、育ち、学び、働き、交流する場として、その再生が求められています。
5 国際化の進展
通信・交通の高度化で日常生活や経済活動における国際化が進展し、「人」や「もの」、「情報」の動きが活発化して市民生活が豊かで便利になっている一方、人件費等経費が安く巨大な市場を抱える中国等へ多くの企業が流出し、製造業の空洞化が発生しました。その後、国際規模での分業化により国内産業は一層の経営革新に取り組むとともに、外国人労働者の受け入れなどによる活性化、国際規格に則した組織編成・体制づくりが求められています。
また、国の観光振興により外国人観光客誘致が推進され、地方自治体による国際化対応施策においても、国際交流を中心としたものから国際協力や外国人が暮らしやすい環境整備へと比重が移ってきています。
6 環境問題の顕在化
地球温暖化は海水面上昇による砂浜消失や低地水没、農作物生産や生態系への悪影響を引き起こし、フロンガス等のオゾン層破壊による紫外線量の増加で、皮膚がんや白内障等の健康被害、植物の生産疎外等が警告されています。このため、先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある各国の数値約束を定めた京都議定書が平成17年2月16日に発効されています。これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄という構造は、見直しを迫られ、循環型社会の形成に向けた取組として、環境技術の開発・普及やごみ分別の徹底による廃棄物の減量化・リサイクル化を一層推進することが重要です。
最近、人と地球にとって健康で持続可能なライフスタイルとして、ロハス(LOHAS=Lifestyles Of Health And Sustainability)という提案が注目されるなど、ごみをなくして資源を活用していく、人と地球にやさしい循環型社会の構築が課題となっています。
7 地方分権の推進
地方が自らの判断と責任の下で主体的に住民本位の行政を展開することが基本であり、地域の創意工夫に基づいて、個性と活力に富んだ地域づくりを進められるよう、国から地方への権限と財源の再配分を促すとともに、自らの行財政改革に積極的に取り組むことが重要です。
また、福祉や環境、まちづくり、防災などの分野において、住民自らがボランティアやNPO活動など多様な形態を取りながら、自主的、主体的に地域社会づくりに参加する動きが加速しているほか、公益的な部門への民間の参加も進んでいます。
今後、住民が誇りと愛着を持てる地域社会づくりを進めていくためには、住民参加の促進と市民合意の形成が不可欠であり、必要な情報や機会の提供などに努め、住民活動を活性化するとともに、行政と民間とのパートナーシップの構築に取り組み、住民が参加しやすい環境づくりを進めていくことが求められています。
8 財政状況の悪化
バブル崩壊後の経済の長期低迷による税収入の減少と経済対策により、平成17年度末の国の長期債務残高は約602兆円で、税収入47.8兆円の約12倍となっています。
本市においても経済低迷による税収入の減少や地方交付税の減少によって、財政状況は厳しさを増しています。
このため、行財政運営においては重点的、効果的かつ効率的に財源と人材を投入することが求められます。また、受益者負担や市民参画の推進等、市民の理解と協力を得るため、行財政運営の透明性確保や積極的な情報開示等が課題となっています。